スペイン語講座のおもしろさを決める上で一番重要なこととは?その鍵は「ヨーロッパとラテンアメリカのバランス」にあると思ってます。シーズン事にバランスのとり方に濃淡があります。
最もヨーロッパ寄りなのは、現在放送中の2011年度下期の講座。というかスペインの話しか登場しません。確かに、番組で取り上げられているスペインの文化や社会は興味深いです。ただあまりに「おヨーロッパ」な雰囲気が漂い過ぎていて、ちょっと物足りないです。(もっとも、スペインは不思議な国。経済危機に陥っているはずなのに、切羽詰った感じが何故かあまりしない。東欧に対しても感じるこの感覚、アジア人が抱く「ヨーロッパマジック」所以でしょうか。それほど偉大なヨーロッパのソブリン。スペインの威厳を前にしたら、どんな経済危機の最中でも、アジア系ファンドはおろか、フレディマックだって、サクラダファミリアを差し押さえ出来ないでしょう。)
一方で最もバランス抜群なのは、2011年上期の講座。スペイン&グアテマラ出身の講師。コロンビア人の学生がスペイン(サラマンカ)に留学してホームステイするという内容のスキッド。ラテンアメリカにフォーカスした文化紹介コーナー。番組出演陣(スキッドも含め)の和気藹々とした雰囲気もさることながら、何よりもヨーロッパとラテンアメリカのバランスの取り方が絶妙でした。ごくごく自然に二つの文化が扱われていて、妙なバイアスがなかったのです。
そして最もラテンアメリカ寄りなのは、数年前の講座。テーマは「アメリカのラティーノ」。ラテンアメリカどころか、もはや舞台はアメリカのみ。ニューヨーク、マイアミ、ロサンゼルスのラティーノの(かなり)ローカルな生活と文化を取り上げたスキッド(何だか CSIみたいなチョイスですね)。なかなかマニアック、良い感じに偏っています。「おヨーロッパ」が好きで憧れてスペイン語を勉強する動機とは、全く相容れない感じが漂っていて好きでした。
ちなみに、実験的番組としてアメリカ路線を更に強化してみたらおもしろいかも。テーマはもちろん「アメリカのラティーノ」。リアリティー番組風にするのが楽しい。お笑い路線は「Real Chicano of Los Angeles(邦題:タコス野郎のウェッサイライフ)」とか、シンプル路線なら「スペイン語:マイアミ」とか。もちろん「ウエストサイド物語」でもいいけど、「ウェッサイ物語」と言い換えるだけで、現代風かつ妙なリアルさが倍増しますね。
いわゆる「おヨーロッパ」崇拝路線でもなく、かといってカウンターサイドからのラテンアメリカリスペクトでもなく、ニュートラルにスペイン語圏の文化を尊重することが今時だと思います。
ロサンゼルス、地下鉄ゴールドラインのマリアッチプラザ駅周辺に行くとこの風景 |
手頃に"メキシコ風味"を味わえる、ダウンタウンのオルベラ街(ユニオンステーションの近く) |
光の質感、抜けるような空、色彩(真っ赤な花) |
あちらに行かないと食べられないリアルタコス(中身はポジョ、そしてシラントロが欠かせない!) |