Jan 25, 2014

春のブルックリン・ボタニカルガーデン

春にニューヨークを訪れるなら、欠かせないのがブルックリン・ボタニカルガーデン/Brooklyn Botanic Garden。ブルックリンで花見なんてどうでしょう?日本のGWの時期が一年で一番美しい季節。100年を越える歴史の中で、何気に日本との関わりを持っている興味深い場所。目にするもの全てが美しく見える奇跡的な場所。地上の楽園のような雰囲気でした。
Brooklyn Botanic Gardenは、2・3ラインのEastern Pkwy Brooklynが最寄です。マンハッタンからのアクセスも抜群。ブルックリン博物館/Brooklyn Museumに隣接しています。そしてプロスペクトパークにも隣接していて、都会でありながらのんびりした雰囲気でした。園内の見所は多いので、トップ5の紹介です。半日はゆっくり楽しめます。
5位はChildren's Garden。なんと1914年から続く子供のための教育施設を兼ねたガーデンです。通り過ぎてしまいそうな景色ですが、1914年から子供のためにガーデンがあるとは、その理念に感心しました。ビーガンや、あまりに熱心な環境保護活動家になってもらう必要はありませんが、こうしたガーデンで恵まれた教育体験を得た子供達は立派な大人になってくれそうです。
 4位はシーンベストのチューリップ。これはもうため息が出ます。お客さんは皆、すっかり見とれていました。美しいものに言葉は要りません。
3位は日本庭園。ブルックリンで鳥居を見るとは不思議な感じです。こうすると、日本にある日本庭園があたかも外国の景色に見えてきます。クレイジーケンバンドの横山剣さんが語るように、横浜にある三渓園が不思議とアメリカのような景色に見えてくるのです。横浜で一番外国風情を感じられる場所は?といえば、異人館や中華街ではなく、実は三渓園です。

2位はギフトショップです。ブルックリン博物館側の入り口付近にあります。全体的に高級感に溢れ、非常にセンスが高いです。こてこてなお土産がなく、これだけで立派な一つのショップです。ハンドクラフト・ローカルアーティスト・アーティサナルにこだわっています。これこそ全世界中の観光地が見習うべき一つのセンスです。
 
1位はなんといっても、Cherry Esplanade。カンザンという桜の種類、ピンク色の二重桜が印象的。通常こうした桜並木は、ソメイヨシノの淡いピンク色のものを想像しますから。ここでは桜祭りが毎年開催されます。GWでも桜に十分間に合います(この写真は2013年5月2日に撮影しました)桜祭りの賑わいもよいですが、平日の午後、こうしたのんびりした花見も良いです。何もしないことがアクティビティというか、ぜひここで昼寝を楽しんでください。
番外編はライラックの木です。Lilac Collectionというコーナー(桜並木の近く)にあります。なかなか巨木です。そしてこの時期ならではの贅沢な楽しみとして、香りを楽しめます。美しい植物園の中で、「香り」を楽しめる貴重なコーナーです。

ちなみに冒頭で述べた、日本とのつながりとは、まず最初に1915年に日本庭園が完成した時に始まります。当時は日本庭園が一つのブームであったようで、千葉県出身の塩田武雄さんという造園師が手がけました。なんと渡米したのは26歳。東海岸には彼が手がけた作品が残っているそうです。しかし彼はサウスカロライナ州の収容所で戦時中に亡くなったという話もあるそうで、残念な限りです。

そして1980年には東京より、灯篭が贈呈されました。2000年には日本庭園リストアドされ、今でも桜祭りは毎年開催されて、日本人歌手もライブパフォーマンスを行ったりと、毎年の恒例行事になっています。1980年代は日本が急速にアメリカに接近を試みた時代だと思います。アメリカ側が好む、好まざるに関わらず、日本がアメリカを好きになった時代だったのでしょう。それから30年が経ちます。かつてのようにアメリカべったりという様相ではないような気がしますが、彼らに与えてもらっている恩恵に対して恩返しが出来ているでしょうか。ブルックリン植物園から見えてくる日米関係。二人の関係を維持する努力は欠かせません。

ブルックリンでブラウンストーンの街並みを眺めるなら

ブルックリンのフォートグリーン/Fort Greeneというエリア。静かで落ち着いた住宅街。素顔のブルックリンに出会えます。フォートグリーン・パークを目指し界隈を歩きました。ブラウンストーンのアパートが立ち並ぶ住宅街を見たいならぜひ。今時のブルックリンらしい高級なブラウンストーンのアパートと、伝統的なマルチエスニシティーを備えた古い街並みを楽しめます。
マンハッタンからのアクセスは便利で、CラインのLafayette Aveや、2~5ラインのAtlantic Aveが最寄です。今回はAtlantic Ave駅で降りました。バークレーズセンターという巨大ドームがあり、賑やかな場所です。駅からHanson Plを歩き(PlとはPlaceの略で、行き止まりのある道に付けられる名前)、Portland Aveに入ります。それでもPortland Aveという道に入ると雰囲気は一転。ブラウンストーンのアパートが美しい住宅街に変わるのです。数ブロック単位で街の雰囲気が変わるところがアメリカらしいです。
 
それにしてもPortland Aveとは、あたかもオレゴン州ポートランドのヒップスター駐在員達が住んでいる地域のようなネーミングです。両都市はヒップスター&ボヘミアン都市として交流がありそうな様に見えながら、ブルックリンに相手にされてないように思えますが。
 
あっという間にFort Greene Parkに到着。完全ローカル仕様です。平日の午前中ということもあり、地元の人達がのんびりしていました。特別何かがある公園ではありません。だからこそ、ベンチで休憩をしたり、読書をしたり、日光浴をしたり。最低でも15分はゆっくりしてください。そうすると、街の魅力に次第に取り付かれていきます。それにしても春のニューヨークは、普通の公園にいても新緑と太陽が美しかったです。アメリカらしい青空と、太陽の強い光と質感が印象に残りました。写真のように、子連れのお母さんをよく見かけました。子連れにも人気な安心して住めるエリアである証拠です。そして学校の宿題?か何かでインタビューをしている人達。
何気ない光景が思い出に残ります。

ちなみにFort Greene Parkは何気ない公園に見えながら、たくさんの歴史が詰まっています。そもそも、Fortと名前が付くように軍事基地の名残です。独立戦争時のロングアイランドの戦いの際に設けられた基地でした。考えてみれば大西洋に突出たロングアイランドやブルックリンは地理的に重要な拠点です。そして公園にはPrison ship martyrs monumentという記念碑があります。これまた独立戦争時に船に閉じ込められてなくなった人達の追悼記念碑なのだそうです。さらに19世紀後半にはオルムステッドによって公園デザインが作られた。 知れば知るほど、歴史は面白いです。
ブルームバーグ市長になって、ニューヨークにはより公園が増えたのだそうです。公園を作って、街に緑が溢れ、まともな人々が集まり、経済的に活力が生じる。都市開発と資本主義のサイクルはまるで教科書のようなお手本的な流れです。日本よりも多様性と階層の差が広いから、現状から「良い方向」へ向かう際の改善の度合いが大きいのではないでしょうか。少なくとも観光客にとっては、「良いもの」として憧れのようにも見えるのでした。こうした手法を直接海外に輸出することは難しいでしょう。
最後に見かけた印象的な看板。全てを語ってくれました。「都市はなぜ魂を失ったか(原題:The Naked City)」という、シャロン・ズーキン/Sharon Zukinさんの本を読んだのが、今回の旅行のきっかけでした。都市開発に興味がある人はぜひ、実際にブルックリンの街並みや人間模様を自分の目で確かめるに限ると思います。色々な利害関係者の思惑が混じるのが現実ですが、それにしても彼らの前向きな思考、「良いもの」を求めようとする求心力、同時に「悪いもの」をきちんと排除しようとする闘争心。パワフルな気持ちを忘れてはいけません!

Jan 13, 2014

【まとめ】ペンシルベニア州フィラデルフィア

ずばりクリームチーズでお馴染みのフィラデルフィアですが、歴史溢れる美しい街並みです。ニューヨークからも、ワシントンDCからも日帰り旅行で訪れる距離。東海岸を訪れるならば、一足伸ばしてフィラデルフィアへもぜひ。

「ペンシルベニア大学 キャンパスめぐり」
http://mytkychronicle.blogspot.jp/2013/12/blog-post.html

アイビーリーグの一つであるペンシルベニア大学は街中に溶け込んだ都市型のキャンパス。全世界屈指のMBAで知られる、ウォートン校は日本人にもお馴染み。光溢れる新緑を眺め、美しいキャンパスを散歩してみては?ニューヨークにもある"LOVE"という彫刻がキャンパスにあるので、探してみてください。

「フィラデルフィア流 おしゃれとは限らないイタリアン」
http://mytkychronicle.blogspot.jp/2013/12/blog-post_31.html

おなじみのイタリアン街を訪れました。チーズステーキを忘れてはいけません。イタリアがおしゃれだって、誰が決めたのでしょうか?時にはやんちゃで、影の歴史をも併せもつ、イタリア系アメリカ人のヘリテージを知りましょう。フランク・シナトラ、トニー・ベネットから、レディー・ガガ。ジャージーショアの彼らだって、立派な"痛リアン?"。

「アメリカのユダヤ人を知る博物館」
 http://mytkychronicle.blogspot.jp/2014/01/blog-post.html 

全米ユダヤ歴史博物館/National Museum of American Jewish History。数々の移民がヨーロッパから辿り着いた東海岸には、ホワイト・エスニシティの伝統が根付いています。ぜひユダヤ系アメリカ人の歴史を知りましょう。「信仰とモラリティに関係はあるか?」「あなたにとって自由が意味するものとは?」キュレーターとのミニ・ワークショップを通じて、深い世界、思考に触れることが出来ました。

「地元感溢れるリッテンハウス・スクエア」
http://mytkychronicle.blogspot.jp/2014/01/blog-post_13.html

ジェイン・ジェイコブスも讃えたリッテンハウス・スクエア。高級住宅街ですが、地元感溢れる心地よい公園が自慢です。本当に豊かで高級な都市開発って何なのでしょうか?

地元感溢れるリッテンハウス・スクエア

観光地のイメージが強いフィラデルフィアで地元感溢れるローカルな雰囲気を楽しむならば、リッテンハウス・スクエア/Rittenhouse Squareは外せません。散歩をしました。なぜこうも心地よいのか?アメリカの都市開発を語る際に欠かせないジェイン・ジェイコブスも、このエリアを讃えた理由が分かりました。春のフィラデルフィアのきれいな写真と共にどうぞ。
リッテンハウス・スクエアという公園へは、地下鉄/SEPTAのBroad Street Line(オレンジ色)のWalnut Locust StationからWalnut Stを歩いて4ブロック。フィラデルフィアの中心部は歩きやすい街でした。リッテンハウス・スクエアは、ペンシルベニア大学、そしてアメリカ造幣局の長官を務めたリッテンハウス氏にちなんで名づけられたそうです。
 
 
周辺の住宅街はこのような雰囲気です。比較的若い人が多いです。なかなか高級な住宅街なのだと思います。ジェイン・ジェイコブス/Jane Jacobsはこのエリアを讃えました。住宅、商業施設、公園、自然のバランスが最高だと。確かにニューヨークのグリニッジ・ビレッジなど彼女が活躍したエリアと同じような心地よさを感じました。常識の範囲内で"適度にごちゃごちゃしている"のですが、要するに高級な住宅街なのです。常識の範囲外のことは起こらなさそうな雰囲気。心地よさを感じるのも当然のことです。
 
ジェイン・ジェイコブス的な議論は、高級な住宅街に一定の方向性をもたらしたのかも知れません。それは極めて家賃が高額でありながら、決してピカピカではなく、適度にごちゃごちゃした雰囲気を保ったエリアがその見た目の割りに高級なのだというセンスです。ジェントリフィケーションや、高級な住宅街の存在そのものに疑問を投げかけるつもりはありませんが、こうしたセンスが絶対的によいものなのかは別にして、なかなかよいものだと思います。見せびらかしのようなピカピカ豪華なものは趣味が悪いと思います。そしてあまりにも豪勢なものも。
 
 
 
 
そして公園の最大の楽しみは人間観察。皆思い思いに美しい春の午後を楽しんでいました。特別何かがある訳ではないのですが、地元の人々が楽しそうに集うこうした光景こそ、旅の記憶に残るのです。特に最後の写真。学生グループだと思うのですが、池のほとりで創作ダンスを踊っていました。この写真の後、彼らは自由な振り付けで池のふちを回りだしたのです。

果たして彼らは高校生でしょうか、大学生でしょうか?いずれにしても、仕草が落ち着いています。彼らなりに様々な悩みや問題を抱えているのでしょうが、大人に見えます。それにしても、学生時代は都市部と郊外、どちらで過ごす方がよりよいでしょうか。自分の経験を踏まえて、やはり都市部に軍配を上げたいと思います。社会との接点を少しでも多く設けることが出来るからです。良い意味で都会の洗練を早い内から浴び、免疫を作っていく。若い時代は思っている以上にあっという間で限られていますから、田舎でのんびりしている暇なんてないのです。

フィラデルフィアのまとめです。
http://mytkychronicle.blogspot.jp/2014/01/blog-post_8220.html 

Jan 2, 2014

アメリカのユダヤ人を知る博物館

フィラデルフィアには国立ユダヤ系アメリカ人博物館/National Museum of American Jewish Historyがあります。全く知らなかった世界で勉強になりました!ヨーロッパの様々な国から移民が到着した東海岸。ヨーロッパ系移民と言っても多様性を包含していますから、フィラデルフィアは彼らのホワイト・エスニシティを学ぶのみ最適な場所です。古代史やホロコーストだけでは終わらない、アメリカにいるユダヤ系の歴史。知っているようで知らない、奥深いユダヤ系の歴史を学んで来ました。
博物館はIndependence Hallと、National Constitution Centerが立ち並ぶIndependence National History Parkにあります。あの自由の鐘が飾られている場所です。アメリカ好きが最後に辿り着く場所ではないでしょうか。スポーツやエンターテイメント、最新のIT機器に代表されるミーハーなアメリカとは正反対の高尚な?歴史と政治好きのための聖地です。SEPTAという地下鉄のMarket Frankford Line(青色)の5th Street Sta.の目の前です。Wells Fargo(銀行)の支店の通りを挟んだ向かい側にあるモダンなビルが博物館です。

入場料を支払い、荷物を預けたらさっそく見て回りましょう。館内はとてもモダンな雰囲気です。建物は4階建てなので上から順番に見て周りました。早速企画展の"Beyond Swastika and Jim Crow"という南部のユダヤ系に関する展示がありました。1930年代に教職を追われて南部に辿り着いたユダヤ系の教職員と、大学の歴史です。ストーリーもさることながら、初めてKKKの白マントを見たのが衝撃です。非常に薄気味悪かったです。何気にスポンサーがMacysでした。デパートが博物館のスポンサーをつとめるのは、印象派展やルーブル美術館展のような来場者数を見込める消費的なエンターテイメント的な絵画展に宣伝を兼ねてのことだと思っていました。エスニシティと信仰、そして差別と抑圧の歴史といったコテコテの企画展のスポンサーをつとめる姿は、その資本力に見合うだけの社会的な貢献も果たしていることの証であり、大人な社会だなと思いました。

もちろん通常展も興味深い。特に、戦後のユダヤ系アメリカ人社会に関する展示は必見です。中流以上に属することができたユダヤ系は、戦後いわゆる郊外の生活を享受することになるのです。画一化された大量消費社会をユダヤ系コミュニティーがいかに受容していったのかは、現在進行形で続いている興味深い内容です。コーエン兄弟の映画"A Serious Man/シリアスマン"で見た世界そのものでした。映画に興味がある人にもおすすめです。

そして最後に学習コーナーがありました。おじさんとおばさん(二人とも教養が高そうな品の良い雰囲気の人達。ブルームバーグ元NY市長といい、ユダヤ系の年配の方は知性的で品がある印象がありますね)のスタッフと交流が出来ました。平日ということもあって、お客さんはほとんどいなく、ゆっくりと色々教えてもらいました。展示を眺めるのもよいですが、こういう文化的な交流が出来るのもアメリカの博物館の魅力だと思います。まるで学生に戻った気分。

「信仰とモラリティには関係があると思うか?」こう聞かれました。そしてゲストがコメントメモを残せるボードに自分の考えを書いてきました。「あなたにとって自由が意味するものとは?」こうも聞かれました。これは、おばさんにビデオブースに案内されて、自分がコメントを話す様子を録画してくれて、ビデオを後でメールで送ってくれるというサービスです。こういう抽象的な議論は大好きです。中高生の学習施設にもなっている訳です。最も、こんな青臭い議論をするよりも、実用的なことを勉強しなさいと言われてしまうかも知れません(もちろんこれは事実で、政治や宗教なんかより、工業や簿記、医療福祉など飯の種になる技術こそ学生は学ぶべきです)。ただ経済的大国であるのならば、青臭い議論をして生きていく人達を養うゆとりを持ってしかるべきなので、こういう施設の意義は大きいですね。経済大国でお金や実業が全てになってしまうと、エコノミック・アニマルだとからかわれる隙を他国に与えてしまうのです。

最後にギフトショップもおもしろいです。おすすめはメズザ/Mezuzahというお守り。門柱を意味するメズザですが、Car Mezuzahという移動のお守り?を手に入れました。きれいな模様が描かれたアクリルボックスの中に、ヘブライ語の紙切れが埋めこまれています。自動車の中に置いていますが、移動の守り神とはユダヤらしいですね。

自分はアジア人で国籍は日本。ブダヒストではなくて、神道の人間です。Car Mezuzahを買ったところでご利益があるのかは知りません。しかしユダヤの文化はとても興味深いものです。彼らの苦しみの歴史を知る必要があるし、彼らの真面目さ、勤勉さ、熱心さは真似るべきです。それにパストラミビーフ、ピクルス、ラトケス、マッツォボールスープ等の彼らの食事はとてもおいしい。古代史やホロコーストだけでなく、現在、それも現代の一般的なアメリカ社会で生きる彼らの文化を知り、交流をしてみませんか?アメリカの中核的な建国精神を代表するIndependence Hallの脇にユダヤ系アメリカ人博物館が建っているという、多様性を表した地理的配置。その中では奥深い彼らの歴史と、現在の姿を知ることが出来るのです。

フィラデルフィアのまとめです。
http://mytkychronicle.blogspot.jp/2014/01/blog-post_8220.html 

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