アメリカの雄大な景色を楽しめるアムトラック。数ある路線でおすすめは?と言えば、ロサンゼルスとシアトルを結ぶ、コーストスターライト号です。日本人に一番手頃なアムトラック体験。短い時間で、アムトラックのエッセンスともいえる景色を楽しめます。短期間の旅行でも気軽に乗れるし、何よりもカリフォルニアのエッセンスが凝縮されたきれいな景色が最高。ロスとサンフランシスコを両方訪れるなら、コーストスターライトにぜひ乗ってみては?
今回(2012年ゴールデンウィーク)は、ロサンゼルス~オークランド(オークランドから、サンフランシスコには無料シャトルバスがあります)を乗りました。ロスを10:30に出て、オークランドには21:30頃につくという約11時間の旅。1日でカリフォルニア縦断を楽しめるのでおすすめです。11時間も飽きないの?と思いますが、何はともあれ写真を見てください。
まずは、ロサンゼルスのユニオンステーションを出発。いつ行ってもきれいな駅です。駅の端末にクレジットカードを通すだけでチェックイン完了。小さなスーツケースなら車内に持ち込めます。預けてしまうより、車内のスーツケース置き場に置いておく方が便利だと思います。車内は何気に満席でした。しばらくロス郊外を走り地味な風景が続くのですが、サンタバーバラに近づくにつれて、一気にカリフォルニア気分が盛り上がって来ます。
左を向けば海、そして右を向けばきれいなコテージ。そしてサンタバーバラの駅に着くとこの美しさ。サンタバーバラは本当にきれいな場所です。また駅に着く度に、タバコ組みは車外に出てぷかぷかやっていました。そして彼らは、次第にみな仲が良くなって、コミュニケーションを深めている感じでした。日本のタバコ部屋みたいですね。タバコを吸わない自分には、タバコミュニケーションはうらやましい限りです。
サンタバーバラを過ぎると、しばらくこの景色が続きます。向かって左の海もきれい、向かって右の緑地(牧場だったりします)もきれい。本当に飽きない景色です。海がきれいなのは当たり前、何気に山側の景色も雄大でよい感じでした。カリフォルニアだけに、海がきれいなのは当たり前なのかも知れませんが、何気に丘や緑がきれいなのもカリフォルニアなのでした。
ちょうど昼時だったので、カフェカーで食事を買いました。スリーパー(寝台車)の人はチケットに食事代が含まれているので食堂で食べることが出来ます。一日乗るだけならコーチ(座席)で十分なので、カフェラウンジに行けば十分です。その日の昼は、牧場を見ながらの「ビーガンバーガー」。味そのものは何とも微妙なのですが(笑)、アムトラックにビーガンメニューがあるとは少し驚きでした。アムトラックにはマスキュランなイメージがあったからです。日本では「野菜を食べましょう」とか、「最近、野菜不足でさ」とよく言います。でもその割には、ビーガンやベジタリアンメニューを見かけません。野菜しか食べない、という文化が広まれば、野菜不足など問題ですら無くなると思うのですが。
こんなブドウ畑もきれいですね。スタインベックの「怒りの葡萄」が思い浮かびました。「太陽の下、ぶどう畑で働くんだ。毎日きれいな、お日様浴びて、ぶどうを収穫しながら、たまにはこっそりぶどうを食べるんだ。天国みたいだな。」あたかも、小説に出てきそうなフレーズが思い浮かびました。"We are not in Kansas anymore"というのも、こういう景色と気持ちのことを言うのかも知れませんね。昼寝タイムならではのまどろみの中、のんびりしました。レンタカー旅行もいいですけど、運転を忘れ、全員がまどれめるのがアムトラックの特権です。
そしてアムトラックは、こんな丘越えもします。緑一面の美しい丘をひたすら、とことこ登って行きます。こういう景色が続くときは、パーラーカー(展望車)に行くのがおすすめです。大きなガラス貼りの車両から景色を楽しめます。
景色を眺めていたら、隣に座っていた同じ年くらいの人が「もう食べきれないから」といって、クッキーをくれました。サンフランシスコの"Fashion Institute"に通っていると言っていました。テイラースフィトみたいな雰囲気の、ひょろっとした人でした。そして席に戻れば、シアトルまで乗りとおすんだ!というおじさんが、カフェカーで買ってきたプレッツェルを分けてくれました。アムトラックは乗り合わせた人との会話が楽しいですね。隣の座席の人と会話をするくらいの、このフレンドリーさ。社交的な人達の雰囲気はなかなかアムトラック、アメリカならではと思いました。
そして一面に広がる畑と、油田を眺めながらサンセットタイム。カリフォルニアは石油が採掘されているので、小さな汲み上げ施設が至る所で動いている景色を見ることが出来ます。海、太陽、畑、緑一面の丘、石油採掘などなど。カリフォルニアのエッセンスを思う存分に楽しみました。そしてコーストスターライトはオークランドに到着。隣のおじさんに"Take care"と言ってお別れ!周りの人達の何人かもそうしていましたが、下車する時に隣の席の人に「さよなら」と行って降りていくなんて、何だか暖かい文化だなと思いました。約半日の旅行でしたけど、景色、そして人の温かさ。アメリカのおおらかさを満喫しました。旅行の思い出に一番残るのは、こういう何気ない体験だったりしますよね。アムトラックはやっぱり好きです。
【トラベルチップ】
・ロサンゼルスはユニオンステーションから出発。荷物をチェックインする時は窓口を、預けない場合は端末に予約に使ったクレジットカードをかざすだけでOK。後は時間になると出発ホームが案内され、ホームへと向かいます。コーチクラスでもトランク置き場はあるし、スリーパーでも小さなトランクなら室内に持ち込めます。チェックインしない方が、むしろ便利かも。
・ユニオンステーションには何と、ファミリーマートがあるので、飲み物やスナックを買うにも便利です。おにぎりもありました。車内では器用に(三角のビニールに包まれた、あのひもを引いて開けるタイプの)おにぎりを食べる人を発見。もし時間があれば、駅前のオルベラ街でメキシコ気分を楽しむのが最高。メキシカンな雑貨もあるし、食事も出来ます。もちろん、フィリップオリジナルでフレンチディップを食べるのもおすすめですね。
・車内は飛行機のビジネスクラス並みにゆったり。暑がりなのでちょうど快適でしたけど、車内はしっかり冷房が効いています。さすが薄着の人が多いけど、カーディガンやブランケットがあると何気にいいかも知れません。
・カフェカー(売店)は微妙にやっていない時間があるので気をつけてください。
・オークランドからサンフランシスコへは無料シャトルバスがあります。コーストスターライトのチケットを買う時は、向かい先をオークランドにするのではなく、必ずサンフランシスコを選ぶことを忘れないでください。市内では、Financial District、フェリービル、フィッシャーマンワーフ、ショッピングセンター(マーケット通りの中心街)に止まるので便利です。
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