Mar 7, 2015

クラシックに楽しめるノースビーチ地区

サンフランシスコのノースビーチ地区。リトルイタリーとビートニク文化に彩られる街並みは、昔ながらのクラシックな楽しみに満ち溢れています。イタリアンのディナーを食べ、カフェや書店 (City Lights Bookstore)で夜の時間を楽しみましょう。映画 On the Roadを見たことがある方は、まるで映画の主人公になったような気分になれます。
ノースビーチ地区へはケーブルカーでアクセス出来ます。マーケット通りのパウエルから乗車したら終点のフィシャーマンズワーフまでは行かずに、途中のMason StとColumbus Aveの交差点で下車します。案内はありませんが、進行方向右手に公園の広場が見えたら降りてください。その名もJoe DiMaggio Playgroundです。乗車中は、中国語と英語が重なったオリエンタルな看板、海が見える丘を駆け抜けていきます。サンフランシスコ滞在の初日にまず体験してみてください。いきなりテンションが上がること間違いなしです。まずフィッシャーマンズワーフまで訪れて、夕方のディナーの時間にノースビーチ地区へ戻ってくるのがベストプランだと思います。ちなみに、車内ではグアテマラ&イタリアからのツーリスト同士が、お互いの言語(スペイン&イタリア語)がどこまで通じ合うかという、楽しい実験を繰り広げていました。何となーく会話が成り立っているかの様な彼らの光景は何気ないものですが、外国を訪れるおもしろさの一つです。

エリアの中心はColumbus Ave。コイトタワー、ワシントンスクエアパークがあります。ディマジオ&マリリン・モンローでお馴染みの教会 (Saints Peter and Paul Church)もありました。ケーブルカーの下車地点からColombus Aveを進んでいきます。City Lights Bookstoreがあるブロックくらいまでが主な見所です。

Sodin'sというレストランを訪れました。クリームソースのリングイーネのパスタです。今時の私達が「リングイーネ」という単語を使い出す以前から、当たり前の様に用いられていた店です。クラシックな魅力に満ち溢れています。常連のおじさん達、家族連れ。これまたベテランな風格を漂わせる店員(まさにママさん)が皆に笑顔を振りまいていました。コミュニティの雰囲気を感じます。郊外の住宅街では味わえない、人間同士の交流と息遣いを見ることが出来ました。"繊細な味にこだわるタイプ"のフーディーな人は、「あまりに古典的なアメリカン・イタリアン料理だ!」と思われるかもしれませんが、ここで楽しむべきなのは、クラシックとも言えるアメリカン・イタリアン料理です。イタリア料理がおしゃれな食べ物だという固定観念は一端、隅に置いておきましょう。

そしてColumbus Aveを進んでいくと、Cafe Grecoが見えて来ました。 おしゃれなイタリアンカフェの固定的イメージを覆すべく、まるでコメディアンのJimmy Kimmelのような店員がエスプレッソを入れてくれました(どうでしょう、ロマンティックではないですね笑)。夜でも賑わっています。むしろ夜だからこそ、小さなノースビーチ地区にたまたま居合わせた人間同士で、一つの時間と空気を共有しているかのような気持ちになれます。自分も郊外の住宅街に住んでいたとしたら、この感覚は一週間に一回は恋しくなってしまいそうです。

最後にCity Lights Bookstoreを訪れましょう。あまりに有名なので語る必要はありませんが、ビートニク文化が好きな方は、少しお酒を飲んだほろ酔い気分で夜に訪れてみてください。ほろ酔い気分で高揚していないと文芸作品を読む気持ちにはなれないし、泥酔していたら、そもそも活字は読めません。店内の2階にある、ロッキングチェアに座ってみてください。サンフランシスコに関する本も置いてあったので、お土産にもぴったりです。"The tree of San Francisco"というSFの街路樹について記した本を買いました。写真が豊富で、散策ルートも掲載された丁寧な本。そういえば、SFの街並みを歩いて思うのは、個性的な街路樹が数多くあることでした。花や実をつけるもの、常緑樹に広葉樹、街路樹にだってダイバーシティーが求められるのがサンフランシスコなのです。

アップルにグーグル、キックスターター。日本から見ていると、今時のサンフランシスコは、最新のテクノロジーとビジネス、そうした業界人達がもたらすヒップで豊かな生活が注目される街だと思いますが、街の歴史を丹念に掘り起こしていくと、個性的なおもしろさの源流の一つはノースビーチ地区に今でも根ざしていることが分かりました。イタリア文化がおしゃれだなんて、誰が決めたのでしょうか。人々の歴史に根ざしてきた、クラシックなアメリカ系イタリア人の文化を感じに行きましょう。人々が存在して紡ぎ出されて来たストーリーこそが歴史と文化であり、活字を越えて、街並みの中に確かに存在しているのですから。

Mar 5, 2015

一番訪れやすいブルーボトルコーヒーの店

サンフランシスコで最も訪れやすいブルーボトルコーヒー/Blue Bottle Coffeeの店は、中心部のマーケット通りから程近いオールドミント/Old Mintという場所にあります。観光やビジネスで訪れて、滞在時間が短くても、便利なマーケット通り近くの店なら、すぐに立ち寄ることが出来ます。夏なのに肌寒いサンフランシスコの朝にはぴったりのコーヒーでした。
マーケット通り周辺には、地下鉄MUNI、バス、BART、ケーブルカーなど公共交通機関が集まっており、主要なホテルも数多くあります。観光やビジネスで滞在される方も多いでしょう。マーケット通りから、5th Streetに入って二つ目の角を向かって右に進むとOld Mint Plazaです。更に奥に入っていくとお馴染みのブルーボトルマーク。知らなければ通り過ぎてしまいそうな店構えです。列が出来ていても、比較的すぐ中に入れます。

細長い店内。入り口付近にはギフトグッズが並び、レジで注文をします。ドリップか、サイフォン式か好きな方を選びます。サイドメニューもどうぞ。マフィンやクッキーはもちろん、食事メニューもありました。店で食べるなら、サイフォンが並べられたカウンターの前に座るのがおすすめ。目の前のサイフォンでコーヒーが淹れられている様子を眺めながら、コーヒーを飲みましょう。店員とお客さんが楽しそうに会話しているのが、アメリカらしい光景でした。
トロピカルで濃い色をしたコーヒーとは対照的に、店内はコケイジャンばかり。時折アジア系を見かけます。それにしても、アップル製品使用率の高さに驚きます。サンフランシスコ、アップル製品、(比較的裕福そうな)コケイジャン、コーヒー!決してスターバックスではないのです。まるでスケッチコメディーの舞台になりそうな光景でした。
それにしても驚くべきは、高級コーヒーを売るだけのストーリーを描けるということでしょうか。決しておしつけがましくはなく、あくまでもクールに頭を使って、高い売価を納得させるのです。どうしたら、ヒップスターの仮面を被りながら、商売に徹することが出来るのでしょうか。頭を使って仕事をしなければいけません。

また高級コーヒーにお金を出せる客層は、何もベイエリアに限らず、日本にだって多いと思います。それにしても、経済的な余裕さと文化的な趣向レベルはどのように結びついているのでしょうか。物を選択して消費をする行為が多少なりとも自己演出であるのだとした時に、単純に財力を見せつける行為は全世界に共通的なものでしょうが、財力に文化的なレベルを伴わせる行為は、アジアに比べると、アメリカなど西洋社会により特徴的なものかも知れません。おいしいコーヒーを全世界(もちろん日本にも)にもたらすことは容易に可能ですが、ブルーボトルコーヒーの店内の雰囲気に特徴的な、ある種の心地よさは、経済的な格差と文化レベルの差がより密接に結びついている(ように見える)社会に特有なものなのでしょうか。

「なぜビーガンやサードウェーブのコーヒーにこだわるのか?」と聞かれたら、「それはあなた達が、ビーガンやサードウェーブのコーヒーにこだわらない人達だからだ。」と答えてあげましょう。ここまで言う人をあまり見掛けたことがないのが幸いです。

Mar 4, 2015

映画 About Alexのレビュー

映画 About Alex/アバウト・アレックスの紹介です。舞台はニューヨーク州北部/Upstate New Yorkの美しい自然。久しぶりに再開した大学時代の友達同士、週末を自然の中で過ごします。再開した理由というのが、仲間の一人である神経衰弱に悩むアレックスを励ますためなのですが、大学卒業後、久しぶりに会った友達と自分とをついつい比べてしまう。あの悩ましい気持ちが表現されています。インディーズ作品ならではの丁寧な心情描写。20代俳優達の繊細で、自分勝手で、心地よいボヘミアンな雰囲気が織り成す心地よさを感じます。
学校を卒業して社会人になった20代が抱える悩みは、世界共通のものなのでしょうか。ついつい相手と自分とを比べてしまう気持ちは、Facebookに代表されるソーシャル・メディアが全世界に普及したこともあり、より普遍的なものになったのではないでしょうか。一定の自己演出を繰り返す必要があるソーシャル・メディアを離れた瞬間、互いに人々は何を感じあうのでしょうか。

また友達グループを定義するものとは何でしょうか。グループ構成員の役割、はたまた外部の人間から見た友達グループの特徴とは。友人関係につきもののテーマの描かれ方は、見る人それぞれに自分なりの考えを投影出来る様に、ドラマチック過ぎず、ごく自然に言葉と気持ちがぶつかりあっています。ただ「この人達、他人の話を聞くよりも、自分を語るのが好きなのね。」というセリフが語る様に、あくまでも「自分自身の存在」が中心になっている点が、外国の作品らしさです。

劇中の音楽も素敵です。When they fight, they fightという、The Generatinalsというバンドの曲が映画のイメージにぴったり。Yourubeで視聴してみてください、出だしのオルガンの音が心に響きます。

そして最も興味深いのは、ニューヨーク州北部/Upstate New Yorkという場所の存在について。ハイソでクラシック、高級でありながら、ボヘミアンでヒップな雰囲気も合わせもつ世界。次期大統領候補?のヒラリー・クリントンの娘さんが挙式を上げたり(ラインベックという街にて)上流階級の話題に事欠かない世界でありながら、ウッドストックのようなボヘミアンな世界も存在しており、最近ではビーコンにあるDIAビーコンに代表される様なコンテンポラリーアートでも知られています。

ボヘミアンでヒップな世界が、資本主義的なパワーに昇華される構図がアメリカらしいです。戦略的なボヘミアンは、ただ指をくわえて世界を眺めている訳ではないのです。劇中でSarah (Aubrey Plaza)が友人の出資を受けてレストランを開くという話になった時、「アップステイトの野菜を仕入れよう」と語っていました。マンハッタンの高級世界と結びつくアップステイト。両者はメトロノース鉄道という物理的なコンタクトによってのみではなく、資本主義の原理によっても結びついています。だって、マンハッタンのファーマーズマーケットの方が野菜が高く売れるのですから。
それにしても注目すべきは、オーブリー・プラザ/Aubrey Plazaという女優。NBCのParks and Recreationで活躍した女優です。デッドパン、awkwardな雰囲気で有名な女優ですが、自己中心的なキャラクター達に囲まれたAbout Alexでは珍しく、まともな存在に見えてきます。Aubrey Plazaの魅力を含めて、About Alexが日本で見られることを望んでいます。

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