サンフランシスコのノースビーチ地区。リトルイタリーとビートニク文化に彩られる街並みは、昔ながらのクラシックな楽しみに満ち溢れています。イタリアンのディナーを食べ、カフェや書店 (City Lights Bookstore)で夜の時間を楽しみましょう。映画 On the Roadを見たことがある方は、まるで映画の主人公になったような気分になれます。
ノースビーチ地区へはケーブルカーでアクセス出来ます。マーケット通りのパウエルから乗車したら終点のフィシャーマンズワーフまでは行かずに、途中のMason StとColumbus Aveの交差点で下車します。案内はありませんが、進行方向右手に公園の広場が見えたら降りてください。その名もJoe DiMaggio Playgroundです。乗車中は、中国語と英語が重なったオリエンタルな看板、海が見える丘を駆け抜けていきます。サンフランシスコ滞在の初日にまず体験してみてください。いきなりテンションが上がること間違いなしです。まずフィッシャーマンズワーフまで訪れて、夕方のディナーの時間にノースビーチ地区へ戻ってくるのがベストプランだと思います。ちなみに、車内ではグアテマラ&イタリアからのツーリスト同士が、お互いの言語(スペイン&イタリア語)がどこまで通じ合うかという、楽しい実験を繰り広げていました。何となーく会話が成り立っているかの様な彼らの光景は何気ないものですが、外国を訪れるおもしろさの一つです。
エリアの中心はColumbus Ave。コイトタワー、ワシントンスクエアパークがあります。ディマジオ&マリリン・モンローでお馴染みの教会 (Saints Peter and Paul Church)もありました。ケーブルカーの下車地点からColombus Aveを進んでいきます。City Lights Bookstoreがあるブロックくらいまでが主な見所です。
Sodin'sというレストランを訪れました。クリームソースのリングイーネのパスタです。今時の私達が「リングイーネ」という単語を使い出す以前から、当たり前の様に用いられていた店です。クラシックな魅力に満ち溢れています。常連のおじさん達、家族連れ。これまたベテランな風格を漂わせる店員(まさにママさん)が皆に笑顔を振りまいていました。コミュニティの雰囲気を感じます。郊外の住宅街では味わえない、人間同士の交流と息遣いを見ることが出来ました。"繊細な味にこだわるタイプ"のフーディーな人は、「あまりに古典的なアメリカン・イタリアン料理だ!」と思われるかもしれませんが、ここで楽しむべきなのは、クラシックとも言えるアメリカン・イタリアン料理です。イタリア料理がおしゃれな食べ物だという固定観念は一端、隅に置いておきましょう。
そしてColumbus Aveを進んでいくと、Cafe Grecoが見えて来ました。 おしゃれなイタリアンカフェの固定的イメージを覆すべく、まるでコメディアンのJimmy Kimmelのような店員がエスプレッソを入れてくれました(どうでしょう、ロマンティックではないですね笑)。夜でも賑わっています。むしろ夜だからこそ、小さなノースビーチ地区にたまたま居合わせた人間同士で、一つの時間と空気を共有しているかのような気持ちになれます。自分も郊外の住宅街に住んでいたとしたら、この感覚は一週間に一回は恋しくなってしまいそうです。
最後にCity Lights Bookstoreを訪れましょう。あまりに有名なので語る必要はありませんが、ビートニク文化が好きな方は、少しお酒を飲んだほろ酔い気分で夜に訪れてみてください。ほろ酔い気分で高揚していないと文芸作品を読む気持ちにはなれないし、泥酔していたら、そもそも活字は読めません。店内の2階にある、ロッキングチェアに座ってみてください。サンフランシスコに関する本も置いてあったので、お土産にもぴったりです。"The tree of San Francisco"というSFの街路樹について記した本を買いました。写真が豊富で、散策ルートも掲載された丁寧な本。そういえば、SFの街並みを歩いて思うのは、個性的な街路樹が数多くあることでした。花や実をつけるもの、常緑樹に広葉樹、街路樹にだってダイバーシティーが求められるのがサンフランシスコなのです。
アップルにグーグル、キックスターター。日本から見ていると、今時のサンフランシスコは、最新のテクノロジーとビジネス、そうした業界人達がもたらすヒップで豊かな生活が注目される街だと思いますが、街の歴史を丹念に掘り起こしていくと、個性的なおもしろさの源流の一つはノースビーチ地区に今でも根ざしていることが分かりました。イタリア文化がおしゃれだなんて、誰が決めたのでしょうか。人々の歴史に根ざしてきた、クラシックなアメリカ系イタリア人の文化を感じに行きましょう。人々が存在して紡ぎ出されて来たストーリーこそが歴史と文化であり、活字を越えて、街並みの中に確かに存在しているのですから。
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