Mar 4, 2015

映画 About Alexのレビュー

映画 About Alex/アバウト・アレックスの紹介です。舞台はニューヨーク州北部/Upstate New Yorkの美しい自然。久しぶりに再開した大学時代の友達同士、週末を自然の中で過ごします。再開した理由というのが、仲間の一人である神経衰弱に悩むアレックスを励ますためなのですが、大学卒業後、久しぶりに会った友達と自分とをついつい比べてしまう。あの悩ましい気持ちが表現されています。インディーズ作品ならではの丁寧な心情描写。20代俳優達の繊細で、自分勝手で、心地よいボヘミアンな雰囲気が織り成す心地よさを感じます。
学校を卒業して社会人になった20代が抱える悩みは、世界共通のものなのでしょうか。ついつい相手と自分とを比べてしまう気持ちは、Facebookに代表されるソーシャル・メディアが全世界に普及したこともあり、より普遍的なものになったのではないでしょうか。一定の自己演出を繰り返す必要があるソーシャル・メディアを離れた瞬間、互いに人々は何を感じあうのでしょうか。

また友達グループを定義するものとは何でしょうか。グループ構成員の役割、はたまた外部の人間から見た友達グループの特徴とは。友人関係につきもののテーマの描かれ方は、見る人それぞれに自分なりの考えを投影出来る様に、ドラマチック過ぎず、ごく自然に言葉と気持ちがぶつかりあっています。ただ「この人達、他人の話を聞くよりも、自分を語るのが好きなのね。」というセリフが語る様に、あくまでも「自分自身の存在」が中心になっている点が、外国の作品らしさです。

劇中の音楽も素敵です。When they fight, they fightという、The Generatinalsというバンドの曲が映画のイメージにぴったり。Yourubeで視聴してみてください、出だしのオルガンの音が心に響きます。

そして最も興味深いのは、ニューヨーク州北部/Upstate New Yorkという場所の存在について。ハイソでクラシック、高級でありながら、ボヘミアンでヒップな雰囲気も合わせもつ世界。次期大統領候補?のヒラリー・クリントンの娘さんが挙式を上げたり(ラインベックという街にて)上流階級の話題に事欠かない世界でありながら、ウッドストックのようなボヘミアンな世界も存在しており、最近ではビーコンにあるDIAビーコンに代表される様なコンテンポラリーアートでも知られています。

ボヘミアンでヒップな世界が、資本主義的なパワーに昇華される構図がアメリカらしいです。戦略的なボヘミアンは、ただ指をくわえて世界を眺めている訳ではないのです。劇中でSarah (Aubrey Plaza)が友人の出資を受けてレストランを開くという話になった時、「アップステイトの野菜を仕入れよう」と語っていました。マンハッタンの高級世界と結びつくアップステイト。両者はメトロノース鉄道という物理的なコンタクトによってのみではなく、資本主義の原理によっても結びついています。だって、マンハッタンのファーマーズマーケットの方が野菜が高く売れるのですから。
それにしても注目すべきは、オーブリー・プラザ/Aubrey Plazaという女優。NBCのParks and Recreationで活躍した女優です。デッドパン、awkwardな雰囲気で有名な女優ですが、自己中心的なキャラクター達に囲まれたAbout Alexでは珍しく、まともな存在に見えてきます。Aubrey Plazaの魅力を含めて、About Alexが日本で見られることを望んでいます。

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