クラフトミュージアム/Museum of Contemporary Craftは、路面電車MAXの"NW 6th & Davis St"から、Davis Stを1ブロック歩くとすぐに到着。NWはもちろんNorth Westのことで、ポートランドの町は東西南北に分かれて、それぞれNW・NE・SW・ SEと呼ばれています。街の中心街、そしてパール地区はNWに属しています。美術館の建物はごくごく自然に街並みに溶け込んでいました。うっかりすると通り過ぎてしまいそうな、おとなしいこの建物が美術館です。
中は1階と2階に分かれていて、1階では企画展、2階では常設展。入館料を払って、まずは常設展からスタート。こじんまりとした展示でしたが、さりげないセンスのよさ。さっそくルーシー・リーの作品を発見。有名なピンクの器がありました。大阪の東洋陶磁美術館で見た時のままでした(ルーシー・リー展)。 ガラス、金属、木、陶器、磁器と素材の違いで印象が大きく異なります。眺めているだけでおもしろいし、そして日常生活で使ってみたい、自分の家に飾ったらどうだろうか?と考えてしまいます。日常生活との近さが魅力です。
そして企画展は「The Bowl」というもの。地元作家が作った器を住民に貸し出す。自分で料理を作って盛り付ける、そしてみんなで食べる。最後にその写真をtumblrに投稿してシェアするという企画だと、キュレーターが教えてくれました。fun.のボーカルにも似た、文科系の人でした。
こうした企画を通じて、コミュニティーと地元の美術館が結びついています。日本でも比較的小さな地方都市でこそ展開しやすそうな活動。今時は、「地元財界の名士が集めた豪華コレクションをどーんと大公開」だなんて、明治時代ばりの見せびらかしの趣味はクールではありません。地元作家の作品を地元の人が愛でる、しかも日常生活の中で。なんて暖かいのでしょう。
ただ漠然としたまま活動を終わらせないようにするには、「地元の人、コミュニティーを日常の芸術を通じて啓蒙してやるのだ」という多少の上から目線があったほうが、方向性がきちんと定まりそうです。健全で優しい心の持ち主である、日本人には啓蒙思想はうっとうしいかも知れません。しかし、コミュニティーとの付き合い方が「お友達感覚」程度では、メッセージ性や何か主張したいことを伝えきれなくなってしまいかねません。
キュレーターは折角だから貸し出してあげるよ、と誘ってくれましたが旅行中なので断念。残念。代わりにギフトショップでローカル作家の作品を手に入れました。クラフトなら「サタデーマーケット」も良いのですが、クラフト美術館のギフトショップの方が、よりアートっぽくて、洗練された雰囲気です。デパートのアートコーナーを、もっと若者向けに自然&モダンな雰囲気(要するにゴテゴテしない)にしたイメージでしょうか。サタデーマーケットは良い意味で手作り過ぎるのです。
そしてこのショップの職員がとてもフレンドリー。「食事と器の組み合わせを考えるのは楽しい」と話をしていたら、「私が日本(京都)に留学していた時、決して高級ではない街の居酒屋でも、そして家庭でも、日本人はより日常生活に近い場面で、食事と器の組み合わせというアートを実践していたのよ」と京都に留学経験があるという職員は感想を教えてくれました。普通の人が、日常生活で実践しているという点は重要ですね。高級で洗練された店やシーンが素晴らしいのはどこに行っても当たり前で、日常生活でいかに実践出来ているか?が真のかっこよさでしょう。エコノミックアニマルに過ぎない日本ですが、私達の日常生活は何気に文化的な側面を大事にしているのですよ笑。
最後に番外編。
みんなでペダルをこいで進んでいくビール自転車。カメラを向けるとポーズをとってくれました。皆さん気さくです。そしてポートランドでは(というかアメリカでは?)、初めて会う人にも、こちらからニコっと笑顔を見せると、相手も快く対応してくれるケースが多いような気がしました。日本にはあまりない習慣かもしれませんが、コミュニケーションを取る上では、大事なことかも知れません。キュレーターも、ギフトショップの職員も、短い時間でありながら心地よい会話を導き出してくれる人達でした。初めて会う人とのコミュニケーションが上手です。社交性が多いにもとめられる社会ならではなのでしょうか?
ポートランドのまとめです。ご参考。
http://mytkychronicle.blogspot.jp/2013/11/blog-post_4735.html