フィラデルフィアには国立ユダヤ系アメリカ人博物館/National Museum of American Jewish Historyがあります。全く知らなかった世界で勉強になりました!ヨーロッパの様々な国から移民が到着した東海岸。ヨーロッパ系移民と言っても多様性を包含していますから、フィラデルフィアは彼らのホワイト・エスニシティを学ぶのみ最適な場所です。古代史やホロコーストだけでは終わらない、アメリカにいるユダヤ系の歴史。知っているようで知らない、奥深いユダヤ系の歴史を学んで来ました。
博物館はIndependence Hallと、National Constitution Centerが立ち並ぶIndependence National History Parkにあります。あの自由の鐘が飾られている場所です。アメリカ好きが最後に辿り着く場所ではないでしょうか。スポーツやエンターテイメント、最新のIT機器に代表されるミーハーなアメリカとは正反対の高尚な?歴史と政治好きのための聖地です。SEPTAという地下鉄のMarket Frankford Line(青色)の5th Street Sta.の目の前です。Wells Fargo(銀行)の支店の通りを挟んだ向かい側にあるモダンなビルが博物館です。
入場料を支払い、荷物を預けたらさっそく見て回りましょう。館内はとてもモダンな雰囲気です。建物は4階建てなので上から順番に見て周りました。早速企画展の"Beyond Swastika and Jim Crow"という南部のユダヤ系に関する展示がありました。1930年代に教職を追われて南部に辿り着いたユダヤ系の教職員と、大学の歴史です。ストーリーもさることながら、初めてKKKの白マントを見たのが衝撃です。非常に薄気味悪かったです。何気にスポンサーがMacysでした。デパートが博物館のスポンサーをつとめるのは、印象派展やルーブル美術館展のような来場者数を見込める消費的なエンターテイメント的な絵画展に宣伝を兼ねてのことだと思っていました。エスニシティと信仰、そして差別と抑圧の歴史といったコテコテの企画展のスポンサーをつとめる姿は、その資本力に見合うだけの社会的な貢献も果たしていることの証であり、大人な社会だなと思いました。
もちろん通常展も興味深い。特に、戦後のユダヤ系アメリカ人社会に関する展示は必見です。中流以上に属することができたユダヤ系は、戦後いわゆる郊外の生活を享受することになるのです。画一化された大量消費社会をユダヤ系コミュニティーがいかに受容していったのかは、現在進行形で続いている興味深い内容です。コーエン兄弟の映画"A Serious Man/シリアスマン"で見た世界そのものでした。映画に興味がある人にもおすすめです。
そして最後に学習コーナーがありました。おじさんとおばさん(二人とも教養が高そうな品の良い雰囲気の人達。ブルームバーグ元NY市長といい、ユダヤ系の年配の方は知性的で品がある印象がありますね)のスタッフと交流が出来ました。平日ということもあって、お客さんはほとんどいなく、ゆっくりと色々教えてもらいました。展示を眺めるのもよいですが、こういう文化的な交流が出来るのもアメリカの博物館の魅力だと思います。まるで学生に戻った気分。
「信仰とモラリティには関係があると思うか?」こう聞かれました。そしてゲストがコメントメモを残せるボードに自分の考えを書いてきました。「あなたにとって自由が意味するものとは?」こうも聞かれました。これは、おばさんにビデオブースに案内されて、自分がコメントを話す様子を録画してくれて、ビデオを後でメールで送ってくれるというサービスです。こういう抽象的な議論は大好きです。中高生の学習施設にもなっている訳です。最も、こんな青臭い議論をするよりも、実用的なことを勉強しなさいと言われてしまうかも知れません(もちろんこれは事実で、政治や宗教なんかより、工業や簿記、医療福祉など飯の種になる技術こそ学生は学ぶべきです)。ただ経済的大国であるのならば、青臭い議論をして生きていく人達を養うゆとりを持ってしかるべきなので、こういう施設の意義は大きいですね。経済大国でお金や実業が全てになってしまうと、エコノミック・アニマルだとからかわれる隙を他国に与えてしまうのです。
最後にギフトショップもおもしろいです。おすすめはメズザ/Mezuzahというお守り。門柱を意味するメズザですが、Car Mezuzahという移動のお守り?を手に入れました。きれいな模様が描かれたアクリルボックスの中に、ヘブライ語の紙切れが埋めこまれています。自動車の中に置いていますが、移動の守り神とはユダヤらしいですね。
自分はアジア人で国籍は日本。ブダヒストではなくて、神道の人間です。Car Mezuzahを買ったところでご利益があるのかは知りません。しかしユダヤの文化はとても興味深いものです。彼らの苦しみの歴史を知る必要があるし、彼らの真面目さ、勤勉さ、熱心さは真似るべきです。それにパストラミビーフ、ピクルス、ラトケス、マッツォボールスープ等の彼らの食事はとてもおいしい。古代史やホロコーストだけでなく、現在、それも現代の一般的なアメリカ社会で生きる彼らの文化を知り、交流をしてみませんか?アメリカの中核的な建国精神を代表するIndependence Hallの脇にユダヤ系アメリカ人博物館が建っているという、多様性を表した地理的配置。その中では奥深い彼らの歴史と、現在の姿を知ることが出来るのです。
フィラデルフィアのまとめです。
http://mytkychronicle.blogspot.jp/2014/01/blog-post_8220.html
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